観光ICTの勘所

Facebookでこのような記事が回ってきた。

観光地で失敗しない!スマホへPUSH通知でわかるgoo日光ガイド実証実験に参加
http://www.asuka-xp.com/goo-nikko-guide-beacon.html

2010年から2011年にかけて類似の実験をやっていたので、感慨深い反面、IT軸で考えると「まだ」こうなると感じてしまう。
私がやった実験はこれ。
http://jpn.nec.com/techrep/journal/g11/n03/pdf/110313.pdf

観光者に対するICT支援の目的は何か?
これをICT軸で考えるか、観光客のニーズから考えるかでソリューションは変わってくる。

NECの実験もgooの実験もかなりICT軸と言わざるを得ないが、一つだけ根本的な違いがある。

観光客はなぜ観光しているのか?
観光地に行くことで、体験し、感動し、知識を増やす、自分や友人家族との記憶の連鎖としてお土産を買い写真を撮る。

ここでICTは何を支援するかというと、情報の提供である。gooの実験はそれに徹しているように思える。
しかし、情報にはDBに蓄積された情報と人の頭にある情報があって、前者の情報に対してはICTは得意だが、後者の情報に対してはコミュニケーションによってしか得られないので、ICTは人と人をつなぐ役割になるしかない。

DBにどれだけ情報を格納できるか?と考えるのはIT屋さんの悪い癖で、観光に必要な情報はまず網羅的には格納しきれないと考えたほうが良い。

例えば京都の実験で観光タクシーの会社から聞いた話。
外国人観光客を乗せて走っていると、思いもよらない質問が多く出るとのこと。
「前の車のナンバープレートはなぜ黄色いのか?」

どう答える?
「軽自動車とはなんぞや」から説明しないといけない。
観光客がスマホで「日本の黄色いナンバープレート」を検索しても、観光客の母国語でちゃんと説明しているサイトはおそらく無い。日本の観光地もそんな説明のDBは用意できない。

こんなのもあった
「バスの1日回数券の自動販売機が日本語表記なので買い方がわからない」
「両替所が近くにあるか知りたい(おそらく日本は現金社会なのでニーズが高いのだろう)」

つまり、観光に関する通り一遍の知識はスマホアプリとWeb検索でなんとかなるものの、観光客が疑問に思うことに対してはDBでは答えられないことばかりということだ。
gooの日光の実験で言えば、前出のサイトを見ていただきたいのだが、お坊さんが何やら話をしている写真がある。そこに写っている赤い看板、木の表札、柱に貼ってあるお札にはなんと書いてあるのか、お札はなんのために貼ってあるのか、お坊さんが首からかけているのは何か?左手に巻いているのは何か?を知りたいというのが欧米観光客に多い。通り一遍の観光知識ではない遭遇疑問解決型観光だ。

画像

(引用:前出のサイト)

これに対しては頭の中にある知識なので「知っている人に聞く」しかない。
つまり知っている人との即時コミュニケーションを生成するしかない。

観光客の疑問は音声だけでは十分に伝わらないので静止画か動画でコミュニケーションの相手に疑問を伝える必要がある。

京都の実証実験では、ICTを使ってはいるが、知識の伝達方法がコミュニケーションになっているところが他の観光ITとは違うポイントだった。

これ以上は、退職しているとはいえ守秘義務があるので書けないが、観光の受け皿は人であると今でも考えている。つまり人が即時に対応できるICTインフラが必要なのだ。「お・も・て・な・し」は人がやるものだ。

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